2017年7月19日水曜日

2016年7月18日、ハーディングフェーレ1号製作の裏話

去年のこの日、私の夢が一つ叶った日でした。
ハーディングフェーレ第1号が、私が尊敬する作曲家光田康典さんのもとへ旅立ちました。
この時の記事はフェイスブック下記をご覧ください。手抜き(笑)と言う意味じゃなく、この時の感動をその日そのまま書いたので、こちらを読んで頂いた方が伝わるかと。↓
https://www.facebook.com/keisuke.hara.961/posts/10209972470932244

改めて、この時の光田さんから頂いたコメントを読んでいると、特にこの文に惹かれました。
「少々あつかい辛いけど、職人が丹精込めて作った同じものが2つとないものを大切に使う……」
この「少々あつかい辛いけど」あぁ、これはそうかもな…って。
でもだからこそ機械では出せない手工芸の音や物作りの良さがそこにあって。
なんだろう。読んでいて心が軽くなる感覚。
皆さんのコメントも嬉しかったなぁ…一つ一つ改めて読み返してました。ありがとう。

ハーディングフェーレ1号の製作のお話
NEWARKヴァイオリン製作学校時代から興味があった装飾楽器。
ハーディングフェーレを見た時は、それはそれは衝撃でして、いつか作れたらと思っていた数年前、まさかここまで出来る様になるとはと言うのが率直な気持ちです。もちろん今でも難しいです笑

ヴァイオリンと違う点で特に苦労したのは
F字孔を立体に削る点
頭の形
象嵌細工の装飾
そして、鬼門だったのが、Rosingと呼ばれる楽器本体に描く事。
何を隠そう私は絵を描く才能が0
でも、だからこそこの楽器を見た時、「もしこんな自分がここまで美しい物を描く事が出来たら、一つ成長出来て楽しいかも!…」
って思いました。

今回はここから2項目のお話。
1つ目は象嵌細工装飾の製作の話。
指板やテールピースも大変だったのですが、悩んだのが、楽器ボディーとネックに装飾するか否か。もちろん初めはするつもりだったのですが、それをする段階に来た時、職人さんにどうやって作るか聞いたら「ボディーとネックに装飾したことない!」
え!?…30本(Rebuild含む)近く作ってる人だからてっきりあると思ってた。もちろん装飾の修復ではたくさん経験あるけど、自身の作品では作る機会がなかったそう。
困った…どう作れば良いのか分からない…諦めて最初の作品だし無難に装飾なしで行こうか。と一時心揺らいだけど、いや、これは挑戦すべきで、しなかったら絶対後悔すると思ったので、本番前に試行錯誤して、活路を見つけた。もちろんそのやり方が正しいとか、もっと良い方法があるかもしれないけれど、これで行けるはずと作り始めた。マザーオブパールの形、サイズ、間隔。計算計算、また計算。
で出来上がったのがこちら



自分でも久し振りに見ました(笑)
今見ても良い感じだと思う…

そしてRosingへ。
それまでに色んな作品見てて、どんな感じは頭ではわかっていたのですが、いざ練習で紙に描いてみても…なんか違う…てか、形いびつ、バランス、全て酷い、なんだコレ、紙でこれで、こんなのカーブしてる木になんて描ける訳ない(笑)
職人さんの描くRosingは現代、昔の作品からしても職人の中ではトップクラスに美しいものだと僕は思っていて、それを見てるから尚更自分に減滅してた。職人さんに「どう練習すれば?」と聞くと「こんな感じ!」サラッと描いて見せてくれたのだけど、これとこの絵がどう繋がってるのさっぱり分からんくて当てになりませんでした(その当時は)
どうしたものか…せっかくここまで上手く出来たのに、ロージングのせいで台無しにしてしまう。毎日不安で始めるのが嫌で仕方なかったです。でも先が見えなくてもとにかく練習を始めた、作品をそのままコピーではなくアイデアの元はあっても自分でちゃんとデザイン考えて個性を出す事に決めて。
使わないヴァイオリン表板を使用して練習、当時の様子。
とにかく少しでもコツをつかむまで戦ってました。
そしてついに腹をくくり、本体に描き始めて行きました。



今見ると「おぉぉ…」って感じですが、この時を思えば、絵心0の人間が良くぞここまで描いた!頑張った!って思います!
こんなに苦労したロージングも今となっては、難しいしデザインも大変だけど恐れる事はなくて楽しくなってきたのは大きな成長です。そう思える様になったことに安心しています。
そしてこれが完成した時は震えた。光速の速さで光田さんにご連絡入れたの今でも覚えてます笑 そして去年の今日彼のもとへと渡ったのでした。
また光田さんとこの楽器にお逢いできる日が楽しみです♪




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